電柱日報

日々の由無し事

『王様の仕立て屋』(大河原 遁)

これまで本誌連載を追いかけるだけで我慢していた作品を既刊分大人買い
主人公の織部悠は、かつてナポリで"ミケランジェロ"とまで称された伝説の職人が唯一その才能を認めた弟子ということで、事仕立てにおいてはスーパーテクニシャンなわけですが、中身が思いっきり江戸っ子気質でありまして、啖呵が気持ち良いくらいに決まっておるわけですよ。
まぁ、悠を含め、主人公周りの面子はお茶目な性格をしておりまして、最後は何らかの形でオチるのが大概なんですけど。
ナポリの仕立て屋が主人公ということで、服飾系のちょっとした薀蓄を知ることが出来たりしつつも*1、細かいギャグを挟んでとっつき易く仕上がってる作品ですよ。
話は変わりますが、この作者さん、相当のさだまさしファンとみました。
「兄貴の一番長い日」はさだまさしの「親父の一番長い日」と同じく、妹の結婚式を前にした兄の話ですし、関白宣言をもじったセリフが出てきたりもします。
なにより、「最期の夢」ではさだまさしの「最期の夢」をそのまま引用していたりします。
「最期の夢」って、シングルカットされて無いどころか、アルバム「日本架空説」の最終曲ですよ?
本人がさだファンか、相当のさだファンが身近に居なければ、存在すら知ることは無いであろう一曲。
そんな曲を持ってくる辺り、通ですなぁ。

*1:必ずしも読んでる人間のセンスが良くなるわけではないのが悲しいところ