電柱日報

日々の由無し事

『優しい煉獄』(森岡浩之)

星界』シリーズの著者が描くパンクでないサイバーモノ。
何年か前に新書で出てたんですが、そのときは手を出さずに居たので、文庫化を機に確保したような次第。
昭和60年を模したバーチャル空間。死後の人間が人格を電子的に移植して暮らす街で、死後もなを仮想人格の維持に必要な金を稼ぐため、唯一の探偵業を営む主人公。
フィリップ・マーロウを気取りながら、今ひとつハードボイルドになりきれない2枚目半の彼が、バージョンアップごとにリアリティが増す(珈琲が冷めるようになったとか)世界に愚痴をこぼしながら、関わっていくささやかな事件たち。
物語後半では、ついに一部の犯罪行為まで解禁(ただしチケット制で非常に高価)され、現実にそっくりなようでいて、現実とは異なる条件下で引き起こされる騒動は、必ずしも派手さはありませんが、地味に面白いですよ。

優しい煉獄 (徳間デュアル文庫)

優しい煉獄 (徳間デュアル文庫)