電柱日報

日々の由無し事

『第三者』(アルバム『うつろい』収録)

さだまさしの詩には、直接的な説明はないのですが、わずかな言葉の断片からその背景を鮮明に思い起こさせるような表現が度々登場します。
風に立つライオン』では、最後の1小節で、それまでモヤモヤと捕らえどころ無かった(どのようにでも解釈可能な)二人の関係に、明確な回答を見せてくれました。
この『第三者』では歌い出しの部分

死んだ珈琲 挾んだままで
外の信号の変わる数を
テーブルに映る 黄色で数えて

がまさにそれで、特に冒頭の「死んだ珈琲」という言葉の持つイメージは強烈でしたねぇ。
そこに至るまでの時間の流れ、喫茶店で向かい合わせに座りながら、すでに話すべき内容もなく、ズルズルと決定的な「別れ」の瞬間に向かって時だけが過ぎていく中、お互いに伏し目がちに相手から目をそらす、そんな二人の様子までもがこの数行に凝縮されているように感じます。
このほか、『うつろい』には、さだまさしの全曲中でも屈指のツンデレヒロイン(語弊有)が登場する『分岐点』なんかがあったりしますヨ。